新幹線 N700系電車
東海道新幹線などで活躍する日本のフラッグシップ的存在の新幹線。
2007年にデビューし、当時は500系新幹線と並んで最高時速300キロで走行する日本最速の新幹線でした。
スピードだけでなく乗り心地や環境への配慮などもブラッシュアップされた一つの完成形のような新幹線車両です。
日本人にとって馴染み深い車両であることからできるだけ忠実に再現しようと考え、極端なデフォルメをしても"らしさ"は外さないようにしました。
まずは本作を制作する上で最も苦戦した先頭形状から

空気抵抗やトンネル通過時の衝撃波を抑えるために断面変化率などを考慮して作られた先頭形状「エアロダブルウィング」。
かっこよくも美しくも感じるこの造形美に魅かれて本車両を作ったようなものです。
しかし、ご覧の通りなかなか複雑な形状をしていてLEGOで再現するのは大変でした。
実は2016年に一度制作を始めたのですが、この組み方に苦戦して結局断念してしまいました。
その後、一昨年に制作した試作に可能性を感じて去年、2度目の制作を決意。ブラッシュアップを繰り返してようやく完成させることができました。
ウェッジプレートやウェッジパーツ、各種カーブスロープパーツを使って極力積分表現やブロック感を抑えて組んでいます。
また、自分の作品の特徴でもある"製品らしさ"を意識して組んでいるのでしっかりとした強度もあります。
N700系新幹線は、先頭形状以外も空気抵抗及び風切り音を抑えるため、車両の出っ張りなどは極力排除されています。そのため本作でもポッチを減らすよう普段以上に気をつけました。
窓は全車両で上下逆さに設置しました。
実際のN700系新幹線の窓が青いラインとの位置が近いためです。

また、車両側面は一体になっていて取り外すことができます。
車両本体の両端にある側面スタッドブロックのポッチ(赤矢印)に車両側面の側面スタッドブロック(緑矢印)を接合することで実現しています。
もちろん、屋根も取り外すこともできるので車内を広く使って遊ぶことができます。
基本的に屋根しか外すことしかできないレゴトレイン。どんなに車内を工夫して面白くしても遊びにくく、それを見ることさえ難しい。そんな命題に自分なりの答えたつもりです。
加えて屋根を外す都合上、基本的にタイルパーツを使うことが多い側面の上部。逆さに組んでいるのはその役割もあります。
ここからは一両ずつの紹介です。
1号車
高さは中間車よりも一段低くなっています。
実際のN700系の1号車と16号車(後尾車)も中間車より低くなっていて、これはトンネル微気圧波という新幹線がトンネルに入った際の騒音を減らすための工夫だそうです。

内部は例によって駆動車となっているのでバッテリーボックスを搭載することができます。

運転席はミニフィグ1体がぎりぎりおさまる程度のスペースです。
2号車
本作で唯一のパンタグラフ付きの車両です。
パンタグラフはモデル同様シンプルに組みました。
遮音板はタイルで再現。逆ブラケットパーツを使って車幅ぴったりおさめました。
車内はベビーカーを置くスペースやトイレがあります。
ベビーカーは固定されていませんが、イスとの間でうまく収まるようになっています。
イスやテーブルは0系とほぼ同じ組み方ですが、それぞれ側面に金塊パーツを付けてポッチを消しました。

トイレ
LEGO社が大好きなトイレ。当然再現しました。
ドアは開いた際、狭い車内で場所をとらないよう斜めに設置。
実物の便器とは異なりますが、ここでは"トイレらしさ"優先しました。

便器を作るのは初めてでしたが、少ないパーツで狭いスペースにおさまる我ながらお気に入りのビルドです。
3号車

1番実物に近い車両かもしれません。
前方には公衆電話と荷物置き場があり、あとはイスが敷き詰められいています。
全員がポニーテールのミニフィグでも座れるように座席の間は1ポッチ空けました。
公衆電話
普段より車内がよく見える分、少しでも何か見栄えするようにしようと設置しました。
現在走行しているN700系からは公衆電話は撤去されてしまったのですが、ここでも"らしさ"を優先しました。
4号車

前方には車椅子スペース、後方には荷物置き場とテレビが設置されています。

この号車のみイスは回転させることができます。
というのも4号車も1号車と同様、屋根が一段低くなっています。そのため他の号車で使用しているイスだと高すぎてしまい、ミニフィグが車内に収まりません。そこで4号車のイスはターンテーブルパーツを使用しました。
全員が向かい合って話せるようになり、他の車両との差別化もできるので結果オーライです。
前方には車椅子スペースがあります。
昨今バリアフリー要素が多く取り入れられている製品。2022年に発売された「シティ急行 60337」ではトレインシリーズとして初めて車いすスペースが設けられました。
2023年に完成する作品が時代に逆行するわけにはいきません。
最後方にはテレビと荷物置き場があります。
組み方は「ホライゾン・エクスプレス 10233」と同じです。何か工夫しようと考えたのですが、さすがはプロが作っただけあってシンプルにして完成されている組み方でした。
制作断念から7年、ようやくN700系新幹線を満足いく形で組み上げることができました。
先頭形状「エアロダブルウィング」を再現できたという点だけでも個人的に大きなブレイクスルーなのですが、車両の側面を取り外すことができたり、各車両に個性をもたせたり、自分なりにいろいろとトレイン作品としてのクオリティを高めたつもりです。
今作は先頭形状の再現が1番の課題だと考えていましたが、それと同じくらい悩まされたのが車内です。
私は単に実物のモデルを縮小して外観だけ再現すればいいというだけでは満足できず、ミニフィグスケールで車内も制作し、それもできるだけ"おもしろく"したいと考えてました。
しかし、実際のN700系新幹線はほとんどの車両でただ座席が敷き詰められているだけ。そこでレゴらしくデフォルメしようとしましたが、これが大変でした。
どうすればN700系らしさを残したまま違和感なく車内を面白くできるか、淡白に見えないようにすることはもちろん、東海道新幹線に乗ったミニフィグの生活感を出したいと考えていました。もはや、デフォルメという名のデザインです。
2019年に完成した前作のトレイン作品『0系新幹線』を大きく上回る出来になりました。